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15 バラバラ

 再びサラマンダーに戻ってきたのは伊能の他に、須賀老人、万全、二宮、土岐、タケトの6人だった。

 予知能力者は「ボクはまだまだ修行不足ですから」と言って、逃げるように帰った。宇宙人たちも話が尽きたのか、すでに店にはいなかった。

 席に着くなり、伊能は老人に向かって訊いた。

「いったいなんですか、この訳の分からない能力は?この馬鹿げた能力は消せるんですか?」

 老人は重々しく頷きながら、しばらく沈黙した。

 しばらくすると寝息が聞こえてきて、万全が慌てて体をゆすって起こした。

「ああ、すまん、すまん。ちょっとウトウトしてしまった」

 老人は何度か頭を振ってから、意外にしっかりした視線を伊能に向けた。

「伊能さん、それから皆さんもそれぞれの能力の発現に気がついたときの話を聞かせてくださるかな?」

 伊能は早口で語り始めた。

「3ヶ月ほど前のことだ。東北の山奥で道に迷ってしまった。カーナビも付いてないオンボロ車のうえ、頼りのケータイの電波も届かない山奥だった。ガソリンも底を突いてきて、闇雲に走るわけにもいかない」

 伊能は遠くを見るような眼差しになった。

「普通ならそんなことにはならないんだが、ちょっと個人的なトラブルを抱えて、自暴自棄になっていたのかもしれない。俺は車を降りて、少しでも電波が届くように小高い丘に登った。それでもアンテナは立たなかった。空を見上げると、満天の星空が広がっていって、思わず俺はケータイを握った手を空に突き上げたんだ。そしたらアレが起こった……」

 万全が同情するような目で頷いた。

「それは……ビックリしたでしょう?」

「気が狂ったんだと思った。なにしろいきなり頭の中に航空地図みたいな映像が飛び込んできたわけだから。夜だったが一番近い明かりがどの方向かは見えた。しかししばらく動けない上に、意思とは関係なくなにやら喋り続けて、泣いたり喚いたり……誰もいない山奥で本当に良かったよ」

「それから何度か試したわけですな?能力の発現とともに、あるいは使用するたびに失ったものはありませんかの?」

 老人の問いかけに、少しの間伊能は黙り込んだ。

「家庭を失った。女房が娘を連れて出て行ったんだ」
 伊能は笑おうとして唇を歪めた。

「それから笑えなくなった。これでも俺は陽気な男だったんだ。今じゃ作り笑いさえできない……」

 再び皆が黙り込んだ。

 沈黙を破ったのは土岐だった。

 土岐は煙草を一本咥えて立ち上がった。
 相変わらず仮面を被っているように無表情のままだ。

「悪いが仕事の時間だ。俺の能力はさっき言ったように生まれつきのものだ。別に何かを失ったこともない。ちょいと暇つぶしのつもりで来たが、結構面白かったよ。じゃあな、皆さん、もう会うことも無いだろう」

 それだけ言うと、万全が引き止める間も与えず、土岐は出て行った。

「なんか、いろんなものを失っているように見えますけどねえ」

 万全が誰に言うともなく呟いた。

 須賀老人が静かに語り始め、皆が注目した。

「不思議なことじゃ。超感覚いわゆるESP、あるいは念動力PKの使用には代償というか副作用のようなものが付いて回ることが多いようじゃ。たとえば超感覚ではなく、共感覚というものがある。これは通常の五感で感じたものを、別な感覚で捉えてしまうことじゃ。たとえば音を聴くと、色が見えてしまう色聴は2000人に一人とも、2万人に一人とも言われておるが、かなりの数がいることは間違いない。わしの知り合いにも一人おるが、ある特定の音階を耳にすると脳裏に浮かぶ鮮やかな色が消えずに、ひどい不眠におちいるそうじゃ」

 伊能の目が鋭くなった。

「俺としちゃあ、こんな能力何の役にも立たない。どぶにでも捨てちまいたい。それで失ったものを取り戻せるのなら」

「おそらくそれに答えられるものはいないじゃろ。万全さんが少しでも髪の毛を失うことを防ごうと、この不思議な髪型を思いついたように、少しずつ能力と折り合いをつけていくことが一番だと思うのじゃが……そうすれば、能力自体も進化、あるいは強化されていくはずじゃ」

 伊能の頬が強張った。

「能力の進化?強化?そんなことをして何になるんです?見世物にでもなるんですか?」

 万全がとりなすように口を挟んできた。

「せっかく授かった能力じゃないですか。超能力というにはお粗末だけど、誰でもできることでもないでしょう?何か人の役にでも立てれば……」

 伊能はここらが潮時だと思い、立ち上がった。

「悪いが、人の役じゃなくて、俺の役に立つもんじゃなければ意味がないんだ。まあ、いろいろと参考になったよ。俺もこれで失礼する」

 伊能は背を向けて立ち去ろうとしたが、ふと立ち止まって振り返った。

「あんたら、人の役に立ちたいのなら、その異能力ってやつで、ここで起きた殺人事件でも解決してみなよ」

 伊能は唇を少しねじまげた。
 自分では笑ったつもりだった。

 
 
 ~つづく

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コメント

楽しみですね。
サラマンダー達が、超能力を使って
どのように殺人事件を解決するのでしょうか?
想像出来ません。
笑えない、伊能に同情しました。

投稿: ドスコイ | 2007年11月28日 (水) 12時16分

ぉもしろいですぅ~ww
今自分もしょーせつ書いている㌔なんかね~・・㊦㊦
ブログに公表できるようぢゃないぷ~(笑

投稿: ミエル | 2007年11月30日 (金) 21時03分

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