« 16 土岐の嗅ぐモノ | トップページ | 18 サラマンダーの幽霊(2) »

17 熱い友情で結ばれつつある異能トリオ

 伊能と土岐が話し込んでいた頃、サラマンダーではすっかり意気投合した様子の万全と二宮、タケトの三人が楽しげに何かを相談していた。

 須賀老人は「おむつの時間ですので、お先に御免なすって」と訳のわからないことをボソボソと呟いて、帰った。

 見た目では、万全がひどく年上に見えるが、聞いてみれば、三人はほとんど同世代と言ってもいい。

 万全は、二宮とタケトに初めて会ったときから、「俺と同じだ」と感じていた。

 学校という集団の中で、いつのまにか孤立してしまうようなタイプなのだ。
 いじめにあったかは分らないが、おそらく友達と呼べる存在はいないのではないかと思っていた。

 もちろん、万全もそうなのだ。

 会社の中でも人間関係がうまくできない。

 小さな会社の庶務係をしているが、ボールペン1本、ホッチキスの針1個でも伝票を要求する万全は、どうも会社では不評のようだ。

 しかし、それは会社の規則にも明記されていることだから、当たり前のことをしているだけなのだ。

 若くて、女性社員たちに人気者の社員がいるのだが、だらしない性格で、何度注意しても、勝手に備品を持っていく。

 思い切って叱りつけたら(もちろん相手は後輩)、最初だけ下を向いてしおらしくしていたが、最後に締めのつもりで「A君も女の子の人気ばかり気にしてないで、そろそろ仕事をしようよ」と、精一杯明るくお茶目に言った。

 A君の態度が豹変したのは、そのときだった。

「あああん?」

 普段は好青年なのに、眉毛を大げさに段違いにして、蛇のような光を放つ眼光で万全を射抜いた。

 口まで曲がっている。
 大変だ、不良になっちゃった……

 後輩は万全のネクタイをおもちゃにしながら、時おりふざけて締め上げるような素振りをしながら、囁くような声で、だが紛れもない威嚇の言葉を続けた。

「こらハゲ親父、あんまり調子こいてっとよお、ツルツルにむしっちゃうよん。海の底に沈めてあげてもいいよ。なあいいこと教えてやるよ。おっさん受付の丸山ちゃんのこと好きだろ。へっ、そんなの見てればわかるって。でもあの娘、ゆんべ俺食っちゃたからねえ。飲み会の流れでさあ。あの女ソートー好き者だぜ。しつけえったらありゃしねえ。あ、そうそう、あんたは一応先輩だから、気を使ってあんたの気持も言っといてやったぜ。そしたら悲鳴上げちゃってさ。センパイ、ゾンビ並の扱いっすよ。チョー気持ち悪がって、大事なとこまで鳥肌立ってたよ」

 そんな悔しい事はざらにあった。

 何でも話せる友人が一人でもいたらと、何度も思ったことがあった。

 タケトは引きこもりになるだけあって、ちょっと繊細な感じがした。ものすごく心のやさしい少年という感じだ。

 二宮、タケト、そして万全の三人に共通しているのは、非常にシャイなところだった。

 三人で能力について話している時に、ちょっと沈黙の時間があった。

 そのときにタケトが勇気を振り絞るように言ったことが、万全の心をも捉えていた。

「あの……僕すごく楽しいです。なんか友達っていうか、仲間っていうか、そういうの一度も経験してないせいかな」

「俺も同じだよ。君たちと出会えて本当によかった。さっき話した通り、僕はサイボーグ009に憧れて、5歳の時から20年間修業を続けたんだ」

「修行ってどんなことをするんですか?」

「寝るときに、天井の電気を見る。電気のスイッチの紐が下がっているだろ。精神を集中して、回れ、回れと眠りに落ちるまで続けるんだ」

「地味な修行ですね」

「そうだろ。金もかからん。正直言うと、結婚したらやめようと思っていた」

「どんな感じで発動したんですか?」

「これがまた全然感動的じゃなくてな。自転車ってさ、あるとき急に乗れるようになるよね。一度乗れたら、もう忘れないし。ちょっとそれに近い感じがある」

「皆それぞれですねえ……」

 タケトが膝を抱えて丸くなった。動物と話せるというだけあって、タケトの仕草や様子、表情が少し動物的な感じがした。

 それは決して周りを不快にさせるようなものではなかった。

 二宮がぐぐっと眉間に力を入れながら、ひょうひょうと話し始めた。

「でも、僕たちに何かできるなんて……無理っしょ」

「でも悔しいよなあ。伊能さんにあんな風に言われて……」

 タケトはなかなか悔しがりらしい。

「この三人は全員サラマンダーに泊ってるんだよね。取りあえず順番決めてさ、見回りだけでもやろうよ。あと能力のパワーアップの方法も皆で研究しよう。他の人に話すと、黙って精神病院に送られるから、我々の活動は極秘だな」

「極秘任務かあ……なんか……萌えますね」

 タケトの目が輝く。

その時万全は、ある事に気がついた。

 タケトの黒ずくめの服装は、しばらく前に流行った『お面ライダー竜虎』のヒーローのコスプレなのだ。

「明日、最高顧問の意見もきいてみよう」

 万全はふと素朴な疑問がわきあがって、タケトに聞いた。

「あのさあ、動物と意思の疎通ができると言ったって、相手は動物でしょう?どの程度の会話ができるの?」

「僕が最初に話したのは飼い猫のチョビでした。チョビの感情のほとんどの部分は、食べ物のことと、寝る場所の確保についてでした。さかりがついてなくて、本当に助かりました」

「それでどんなことが分かったの?」

「まず飼い主を尊敬するという気持はさらさらないということです。可愛いだろ?ん?撫でたいか?まあいいだろう、ちょっとだけだぜ。なんだゴロゴロまで聞きたいとは、あんた飼い主だからって調子に乗ってはいけないよ。ええい!大サービスだ。顔をなすりつけてやって、ゴロゴロのオマケつき。刺身のふた切れも食わせてもらえるんだろうねえ。と、こんな感じです」

 二宮が憮然とした表情で言った。

「俺は絶対猫飼わない!」

「皆、ブースを決めておきましょうよ。連絡のときも便利だし」

 二宮がちょっと不安そうな顔をした。

「俺のブースにきたら、いないと思っても、椅子の上あたりを叩いてくれ。いるはずだから」

「とりあえず今日のブースを決めに行きましょう。幽霊伝説の再確認もする必要がありますね。僕たちが犯人を捕まえたら、伊能さんどんな顔するでしょうね。楽しみい……」

 このことが次の惨劇を招くとは、誰ひとり思っていなかった。
 
 
 ~つづく

|

« 16 土岐の嗅ぐモノ | トップページ | 18 サラマンダーの幽霊(2) »

コメント

うーーん。
新展開の予兆に胸の鼓動が高まります。
どんな、惨劇が待っているのでしょうか?
私は怖がりなので、
グロテスクなのは耐えられません。
楽しみですね。

投稿: ドスコイ | 2007年12月 5日 (水) 13時09分

上村佑先生、頑張ってください。
早く先が読みたいです。

投稿: スー | 2007年12月10日 (月) 08時26分

よろしくお願いします。由否は、毎日オナニーしてます。みんなわ?

投稿: 由否 | 2007年12月15日 (土) 17時53分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 16 土岐の嗅ぐモノ | トップページ | 18 サラマンダーの幽霊(2) »