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34 GOD BLESS (神の祝福)

 大学から帰宅した三上は、まっすぐ研究室に向かい、こもりきりになった。

 いよいよ計画も最終段階に入っていた。

 三上はパソコンの前に座り、長い足を組んだ。

 ガラス越しに見える、密閉された菌操作室のテーブルの上には、20個の銀色に輝く小さな缶が整然と並んでいる。

 タイマー式の自動噴霧装置だ。
 中には白い粉がぎっしりと詰め込まれていた。

 一見すると、噴霧式の殺虫剤のように見える。
 しかしこの小さな缶が、三上の用意した大量殺戮兵器だった。

 効率よく働けば、一つの缶で数万人を殺すことも可能だった。

 白い粉は、炭疽菌(たんそきん)の芽胞(細菌の半休眠状態)と呼ばれるものだった。 

 炭疽菌はスペインから地中海沿岸地域、アフリカの一部の土壌に多く存在するが、世界中どこでも見られる普遍的な細菌である。

 しかし生物兵器として、天然痘と並んで、最も恐れられている。

 炭疽菌は皮膚についても、肺に吸い込んでも、口から入っても炭疽症を引き起こす。

 吸い込んでしまった場合の致死率は100%に近く、ほかの場合も死亡率が極めて高い。しかも潜伏期間が1日から6日程度の短期間だ。

 さらに芽胞の状態だと、熱や化学物質、エックス線にまで高い耐久性を示す。この状態で地中にあると40年以上も生存することができる。

 9・11のアメリカ同時多発テロに続いて、手紙による炭疽菌テロが世間を震撼させたが、同封されていたのが同じく芽胞だった。

 しかも三上は遺伝子操作を繰り返して、さらに強烈な毒性を持ち、僅か数時間で発症する炭疽菌を作り出していた。

 三上は自分の作品ともいえる炭疽菌に、GOD BLESS(略称GB 神の祝福)と名付けた。

 GBは1個当たり千分の1ミリ程度の大きさしかないが、数個で人間を殺す力を持つ、生きた爆弾だった。

 GBの元になった菌は、三上の曽祖父が私設研究所に保管していたものだ。

 第二次世界大戦中、日本陸軍の生物兵器開発に携わっていた曽祖父が密かに残した遺産だった。

 寝食も忘れて細菌兵器の開発を進めた、曽祖父の無念さの証だと三上は思っていた。
 三上家の尊厳を、取り戻すための戦いには、相応しい武器だった。

 三上はパソコンに向かい、テロ計画のファイルを開いた。
 ファイル名は{GOD BLESS JAPAN}。



 GOD BLESS JAPAN 10・31

実行日 10月31日 

実行部隊 20チーム(各2名)チーム同士の連絡は取れない。すべてのチームが点として行動する。詳細な設置場所は前日に各チームに知らせる。(設置の要領についても同じ)

連絡役&特別任務 YUKI

午前9時  千代田区内の指定した箇所(20箇所)にGB缶を設置する。

設置箇所 
A 標的となる建物― 国会議事堂、首相官邸、検察庁、法務省、警察庁、警視庁、厚生労働省、東京地裁、最高裁、自民党本部、民主党本部
B 拡散を目的として設置する場所― 東京駅、日比谷公園、北の丸公園、帝都大学、秋葉原、丸の内、霞ヶ関、九段、外神田


午前10時 GB散布開始。
感染者数(気象条件などにより誤差が出る)4万人~18万人。

午後2時  発症者数千人~2万人(救急病院壊滅、警察機能マヒ、原因特定に至らず)鳥インフルエンザ発生のデマ等によりパニック状態に。

午後3時  発症者数1万人~6万人。死亡者数百人~六百人。
閣僚等の発症により政府機能を失う。
都知事による特別措置?(非常事態宣言、戒厳令、自衛隊出動の可能性)

午後4時  発症者数2万人~10万人。死亡者数千人~5千人。
原因が特定される。
医療的に対応できず、アメリカに支援要請の可能性。

午後5時  発症者数3万人~12万人。
死亡者数三千人~1万2千人。
首都機能消滅。

午後6時  発症者数4万人~18万人。
死亡者数八千人~三万六千人。

  *ここまでで、感染者の99%が発症する。
  *以降死者の数だけが増えていく。
  *最終的に致死率平均75%。死亡者数三万人~十三万五千人。

 パソコン画面にメールの到着を告げるメッセージが出た。
 三上はファイルを閉じて、メールを開いた。
 思ったとおり、三上が唯一信頼する者からのメールだった。
 文面は相変わらず短い。


 {須賀常太郎を抹殺せよ。計画のリスクファクターになる恐れあり。早急に。真の友人}

 
 
 ~つづく

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コメント

怖いですね。
ついに、恐ろしいテロ計画が全貌を
表しました。
凄まじいテロ計画です。
どうやって、このテロ計画に
立ち向かっていくのでしょうか?

投稿: ドスコイ | 2008年2月17日 (日) 08時08分

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