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32 警察病院

「なんだ、警察病院も千代田区にあるんだなあ」

 飯田橋の駅を降りてすぐの、レンガ色をした大きな病院を見上げながら二宮は呟いた。

 想像と違ったのは、警察病院といっても一般の病院と変わらず、誰でも利用できるということだ。

 まったく自由に人が出入りしていた。
 入口から警官のチェックがあると、覚悟していた二宮にとっては、ちょっと拍子抜けだった。

 タケトの病室は4階の外科病棟で見つけた。
 個室で面会謝絶の札は掛かっているが警官の姿はない。

 頻繁に行きかう看護師や患者たちの様子を見ると、二宮の事を認知していないようだ。

 二宮はすっと病室の中に入って行った。
 大きな窓のある明るい部屋だった。

 タケトは眠っていた。
 首の回りに包帯を巻かれて、腕には点滴のチューブがつながっている。

 顔が少し蒼ざめていた。

 ふと何かの気配を感じたかのように、タケトの目が開いた。

 二宮は努めて気楽な調子で声をかけた。
「よっ、大丈夫か?」

 タケトの目が二宮の姿をとらえ、初めは驚いたように目を見開いたが、すぐにっこりと笑った。

「喋れるかい?」

 二宮の問いかけにタケトは喉を指さしながら小さな声で言った。
「少しなら……喋ると傷が痛むんです」

「オーケー、じゃあまず俺の話を黙って聞いてよ。信じられないような話もあると思うけど……」 

 二宮はタケトが襲われて以降のこと、須賀の正体、不思議な少年希のこと、テロ計画のことなどをタケトに話して聞かせた。

 今一つ自分でもよく理解できていないので、うまく喋れたか自信はなかった。

 しかしタケトの大きな目は驚きの表情から、強い輝きを放つ別なものへと変化していた。

「そうか、薬のせいなのか……化け物じゃなかったんだ」
 痛むのか、顔をしかめながら小声で言ってから、二宮を見つめて悪戯っぽく微笑んだ。

「ずいぶん簡単にこんな話を信じるんだなあ……俺なんか今でも良くわかんないのに」

「信じますよ。だって僕たちだって信じられないような能力の持ち主じゃないですか。そうかセイギの味方か……いいなあ、僕も一緒にやりたかったなあ……」

 振り絞るようなタケトの声に、思わず二宮はタケトの手を握った。
「すぐに治るさ。そしたら一緒にやろう」

 二宮の手をタケトは力強く握り返してきた。

「それでさ、どうなの?薬を飲まされた可能性はある?」

「もしかしたらブースで飲んでいたものに入れられたかもしれません。あと、化け物が出る前に、僅かな異臭を感じたような気もします」

「ふーん。他に何かない?どんな顔のお化けだったの?」

「色の白い、普通なら美人なんだと思います。でも首だけだと……かえって怖かったです。そういえば、僕がその場所に行ったのは掲示板の書き込みを見たからです。直前の書き込みで、サラマンダーで首だけの幽霊を見たっていう……」

 そこまで喋るとタケトはつらそうに顔をしかめた。

 二宮はここらが潮時と思った。
「ごめん。もういいよ。また来るから、早く体治せよ」

「二宮さん……」
 タケトが縋りつくように、二宮の手を強く握った。

「僕も何かお手伝いできないか、一生懸命考えます」

「分ってるって。でも治るまでは大人しくしていろよ」

「二宮さん、状況は時々教えて下さいね」

「オーケー、もちろんさ」

 二宮が立ち上がった時、背広姿の刑事らしき男がノックもせずに病室に入ってきた。

 二宮は一瞬凍りついた。

 タケトが点滴のチューブを引っ張って、点滴台を倒した。
 派手な音が室内に響いた。
 刑事がそちらに気を取られたすきに、二宮は気配を消すことができた。

「おいおい、危ないなあ。お前まだラリってんのか」

 ブツブツ言う刑事の横をすり抜けて、二宮は病室を出た。 
 
 須賀邸に戻った二宮を迎えた万全の眼が、嬉々として輝いていた。
「二宮君、凄い能力が使えるようになったよ!」

 後ろで伊能が、苦い顔をしていた。
 
 
 ~つづく

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コメント

二宮君の超能力は凄いですね。
気配を消せるとは、昔の忍者も鍛錬で、
同じような能力を持っていたと思います。

投稿: ドスコイ | 2008年2月 9日 (土) 08時06分

すごい能力とは何でしょう・・
気になります~・・続きが早く読みたい。
話がテロ事件のくわだてや意外な展開に先が
どうなるのか・・

投稿: | 2008年2月12日 (火) 12時42分

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