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42 電光石火

 須賀と土岐は六本木にある高級マンションに連れて行かれた。
 数ある潜伏場所の一つらしい。

 襲撃者の男は、別な場所に連れて行かれた。
 若い男だったが、目が恐怖に怯えていた。

 須賀たちの所にも5、6人の筋骨たくましい男たちがいた。

 須賀に電話がかかってきたのは、マンションに着いてから1時間たったころだろうか。

 しばらくは黙って聞いていた。
「よし、そいつらをシラミ潰しにしろ。そのシェイダというボスはわしのもとに生かして連れてくるんじゃ。夕方までには片をつけろ」

 うやうやしく命令を聞いていた若い男が、言いづらそうに口を開いた。
「渋谷のイラン人グループは、神州連合がバックにいますが、どうしましょうか?」

 神州連合は西日本の雄として、愛桜連合とは犬猿の仲だった。

 須賀は黙って電話をかけ始めた。
「おお、須賀ですじゃ。久しぶりですのう。実は今朝ほどイラン人のグループに襲われましてな。わしをかばった大事な若者頭が命を落としましたのじゃ。幸い4人のヒットマンのうち一人を捉まえましてな。どうやら渋谷界隈を縄張りにするシェイダという男が首謀者らしい。これから、こいつら全員追い込みかけるが、あんたがバックにいるんじゃないかと、うちの若いものがいうのでな。もしそれが本当なら、あんたも的にかけなきゃいかんからの」

 それからしばらく須賀は相手の言うことを黙って聞いていた。
 大声で必死に弁解しているのが、受話器から漏れ聞こえている。

「ほうか。あんたもシェイダたらいう奴の捕獲に協力してもらえるか。まあ、よろしく頼む」

 電話を切ると、須賀は無表情に若者に告げた。
「神州連合のトップにクンロク入れといた。やつらを案内役として使え。100人ぐらいで当たれ。今夜中にシェイダって奴をわしの前に連れてこい」

「押忍!」と返事して連絡に走ろうとする若い者を、須賀が呼びとめた。

「神州連合の会長が言うのには、きゃつらは武器の密売もやっているらしい。外国人組織にしては統制が取れているらしい。全員に伝えておけ。きゃつらはチャカを弾くのにためらいがない。こっちもそれでいけ」

 須賀はタンスに行き、中から立派な拵えの日本刀を取り出してきた。
 波紋を光りに透かして見ながら、丁寧に打ち粉をはたいていく。

「須賀さん、その刀は?」
「わしの愛刀ですじゃ。シェイダが全部話したら、これで伊吹の仇を討ってやります」

「す、すると……」

「そっ首を叩き落としてやります」
 庭の芝生を刈ってきますというような調子なので、土岐も思わず軽い調子で「そうですよね」と肯いていた。

 その頃シェイダはパニックに陥っていた。

 自分の居場所を部下にすら教えないほど用心深い男だったが、須賀襲撃が失敗したとの連絡をうけた後、配下の誰にも連絡が取れなくなっていた。

 やっと電話がかかってきて、シェイダは飛びついた。
 しかし電話の相手は部下ではなかった。

 信州連合とシェイダの連絡役を務めている、玉城という蛇のような眼をした男だった。
「まだ生きていたか?」

 およそユーモアのセンスの感じられない玉城の声が、多少愉快そうに聞こえた。

「玉城サン、何がオキテルノ?セツメイシテヨ」
 電話の向こうで玉城が笑っていた。
 シェイダは玉城の笑い声を初めて聞いた。

「お前ら、須賀の親分を狙ったんだって?馬鹿な奴らだ。会長からの連絡を伝えるぞ。今後一切お前らの協力はしない。それどころか、間もなく俺達もお前らを追い込むぞ。お前はもう死んでるんだよ」
 玉城の嘲るような笑い声の聞こえる受話器を叩き切った。

 シェイダはある限りの現金、武器、ドラッグをトランクに詰め込み、隠れ家にしている三軒茶屋の小さなスナックを出た。

 外は天気が良く明るかったが、シェイダの心は暗黒だった。
 どこからとも現れた4人の男がシェイダを取り囲み、体中に固い銃口が押し付けられたからだ。

 シェイダにとって初めての感情だった。
 絶望か――シェイダは大人しく男たちの車に乗り込んだ。

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コメント

須賀老人の実力は、絶大ですね。
暗黒社会の実力者に、
逆らいうことは、文字通り死を意味します。

投稿: ドスコイ | 2008年3月14日 (金) 21時23分

須賀老人かっこいいですね。
先の展開が楽しみです

投稿: | 2008年3月27日 (木) 12時28分

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