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47 ゲームの準備(2)

  それぞれが自分の使いやすい護身具を選んだ。

 伊能はマイオトロンとスリングショットにした。
 万全はグレネードとマキビシ。
 土岐はマイオトロンと伸縮式警棒。
 須賀はスタンガンを選んだ。

「考えれば考えるほど、このゲームは気に入らない」
 伸縮式警棒を、重さを確かめるように振りながら土岐が呟いた。

「確かにそうですね……」
 伊能は読んでいたマイオトロンの説明書から顔を上げた。

「まず相手の人数が分らない。まさかユキって女一人じゃあるまい。この前の襲撃みたいに本物の銃を持っているかもしれない」

「でも、それなら屋外の方が良くないですか?あんな場所で発砲したら、あっという間に警察に囲まれますよ。むしろサラマンダーと、場所を指定しているところが俺は気に入らないですね」

「ヤクザは駄目だが、俺たちなら何人来てもいいって言ってたよな。まったくなめられてるわけだ」

「実はそれが一番不思議なんですよ。俺や万全はともかく、土岐さんの嗅ぐ能力は奴らにとって脅威のはず。もしかすると、知らないんじゃないかとも思えるんですよね」

「二宮だったら知ってるぜ」

「そうなんですよね……」

「とにかく、サラマンダーの中でどう行動するかを決めよう。須賀さんと万全はどこ行ったんだ?」

「グレネードの栓が固いとかで、何か道具を探しにキッチンの方へ行きましたよ」

「呼んでくるか」といって土岐が立ち上がったとき、異様な声が聞こえてきた。

「うぎゃああ」
「うえほえほえほえほ」
「かんぎ!かんぎせんまわじて!」
「まどだ!まどあげろ!げほげほ」

 キッチンとリビングの間のドアが開いた。

 護身具の説明をした男が、須賀を抱えるようにリビングに駆け込んできた。須賀の口をタオルで覆っている。

 黄色っぽい煙のようなものがリビングに流れ込んできた。

「窓を開けてください!」
 男が叫ぶ。

 腐った玉ねぎと硫黄が混ざったような匂いに、伊能も土岐も思わず吐きそうになる。目に突き刺すような痛みが走る。涙が溢れ出す。

 それでも伊能は走って窓を全開にした。
 10分ほどでようやく目を開けても大丈夫なくらいになった。

「何があったんですか?」
 伊能が須賀に訊ねた。

 須賀はまだ咳きが止まらず、男が懸命に背中を撫でさすっていた。

 男が憎々しげにキッチンの方を見ながらいった。
「グレネードを暴発させたんですよ。あの変な頭の人が。わざわざ黄色くDANGERって書かれている場所にアイスピックを突き立てたんです。いったい何を考えてるんですかね!」 

「何も考えていないんだろうなあ……あれ?万全はどこだ?」

 伊能と土岐がキッチンに行ってみると、万全が悶絶していた。
 右手にアイスピックを持ったままだ。

 30分後意識を取り戻した万全は、皆の冷ややかな視線に小さくなった。

「さて、万全さんも大丈夫なようですから、今夜の打ち合わせをしましょうか」
 須賀は無表情にそう言うと、軽く咳きこんだ。

 万全がさらに小さくなった。

「さっき土岐さんとも話したんだが、サラマンダーに入ってからの動き方を決めておかないとまずいと思う」
 伊能が切り出した。

「とにかく敵の目的は須賀さんを殺すことだ。俺たちの目的はユキという女を捕まえることだ。当然こちらとしては、須賀さんを完全に守りつつ、ユキを探すということになる。敵がユキだけなのか、仲間もいるのか、どんな武器を持っているのか、なぜサラマンダーという場所を指定したのか、分らないことだらけだ」

「わしの安全など、二の次にして下され。ユキを捕まえることを最優先でお願いしたい」

 土岐が首を振った。
「いや、須賀さんは一人じゃない。希君と二人分だ。だから敵も須賀さんにこだわるんだろう」

 伊能はサラマンダーの見取り図を出した。
 土岐や万全に聞きながら、手書きで作ったものだ。

「入口カウンターの前がコミュニティスペースになっている。いつも誰かがいる場所だ。ここに本陣を置いたらどうだろう?須賀さんにはここにいてもらう。ガード役は土岐さんだ。土岐さんなら危険な奴が近付けば匂いで分る。万一のときには、例の凄い異能力も使える」

「伊能と万全がユキを探すのか?」

「いや、ユキは探さない」

「えっ」思わず全員が声を上げた。

「ユキの目的は須賀さんだ。必ず向こうからやってくる。俺と万全は獲物を追いたてる勢子役だ」

「それはいいですね。僕も賛成です」

「あっ、希君だ!」土岐の目つきが柔和になる。

「それともう一つ、僕からの提案なんですけど、夜まで時間がありますし、皆さんの異能力の可能性を探ってみませんか?もしかすると、凄い武器になるかもしれませんよ」

「賛成です!隊長!」
 万全が急に元気になった。

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コメント

セイギのチカラで、
マイオトロンを初めて知りました。
NETで調べてみると、非常に人気があり
効果は絶大のようです。
アメリカからの入荷が少なくて、
手に入れにく商品のようです。

投稿: ドスコイ | 2008年4月 2日 (水) 07時23分

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