52 生身剥ぎ(ナマハゲ)
人体としてデッサンが狂っていた。
YUKIだったときに身に付けていたタイトなスカートはビリビリに破れ、腰みののようにまとわりついている。
そこから力士のように太い毛むくじゃらの足が突き出していた。
目は虎のように黄色く輝いている。
思わず伊能は恐怖に凍りついてしまった。
化け物が長い刃物を振り上げた。
――やられる!
伊能は眼を瞑った。
「貴様!動くな!」
誰かに背中をつかまれ引っ張られた。
目を開けると警官が数人階段を駆け下りてくるのが見えた。
「伊能!早く上がってこい!」
土岐が叫ぶのが聞こえた。
伊能と入れ替わるように化け物の前面に立った警官が上ずった叫び声をあげた。
「なんだなんだなんだ!こいつあああ!動くなああ!あああ!やめろおおお!」
物凄い勢いで警官隊が逃げてきた。
伊能達を押しのけて逃げていく。
土岐が一人を捕まえて怒鳴りつける。
「お前ら警察だろ?逃げんじゃねえ。あいつをなんとかしろ!」
蒼白になった若い警官は土岐の手を振りほどいて喚いた。
「冗談じゃない!俺達はただの警官だ!地球防衛軍じゃない!あんな化け物と闘うほど給料もらってない!」
逃げる警官を呆気にとられて見送るうちに、土岐はすぐそばに生臭い息使いを感じた。
――しまった。
目の前にナマハゲがいた。
牙をむき出して笑っていた。
そしてそのまま動かなくなった。
最初、土岐は自分の能力が発動したのかと思った。
しかしナマハゲを照らすピンク色の光に気が付き振り返ると、万全と手を握る須賀の姿があった。
万全の禿げた頭頂部から、ピンクの光が発していた。
伊能がすかさずナマハゲの身体にマイオトロンを押しあてた。
ナマハゲは崩れ落ちるように床に倒れた。
みるみる元の姿に戻っていく。
「親っさん!大丈夫ですか?」
須賀の部下たちが駆け込んできた。
全員が拳銃を構えていた。
「その女を運べ。すぐにおまわりがどっとやってくるぞ。急げ!」
須賀の部下たちは拳銃をしまうとYUKIに向かった。
半裸の状態になって倒れているYUKIを軽々と運び去る。
「わしらも急ぎましょう。こんなとこで警察に捕まるわけにはいきません」
須賀の言葉に全員が走って外に出た。
須賀がよろめいた。
伊能が身体を支える。
「大丈夫ですか?」
須賀が苦しそうな表情で伊能を見た。
「わしは大丈夫ですじゃ……しかし希君が……」
「希君が?どうしたんですか?」
「希君が……希君が、減ってきてしまった!」
| 固定リンク




コメント