69 兆し
その日の朝、YUKIは空を見上げ、やけに多くのカラスを目にして思わず微笑んだ。
手配は完璧に終えている。
今日、未曽有のテロが行われ、この国は混沌に陥るだろう。
――カラスは死者の出るところに集まってくる。素晴らしい兆しだわ。
AM5:00
「最後の確認です」
伊能が須賀の4人の部下を含めた全員の前で話し始めた。
「須賀さんの部下、待機組を除いた880名。これを2名ずつ440組のチームに分けました。このうち400組は先ほど説明した通りの場所に待機してもらいます。現場到着は8時30分」
伊能が指したホワイトボードには、永田町20組、霞が関20組、丸の内20組など地域別の動員数。国会議事堂、首相官邸、検察庁、法務省など建物別の動員数など細かく記してあった。
「武器の携帯については最後まで悩みましたが、敵2名に対してこちらも2名で当たることを考えれば、やむをえないという結論に達しました。ただし目的はテロリストを捕えることではありません。所詮彼らはこのテロだけに雇われた者にすぎません。目的はGBという生物兵器の回収です。回収方法については――」
伊能は再びホワイトボードを指した。
「缶の上部にある赤いスイッチ。これが押し込まれている状態がONの状態です。これをつまんで引上げる。それでOFFになります。目覚まし時計と同じ、単純な構造です。ただし念のため各チームで用意した大型の密閉型ポットに必ずしまってください」
伊能は言葉を切って、皆の顔を見渡した。
どの顔も決意に満ちていた。
万全ですら凛々しく思えたほどだ。
「行動時間は10時20分まで。10時20分になったら速やかに退避行動を取ってください。基本的には地下鉄で、地上は危険が大きくなります。俺と伊能さんは別々に行動したほうがいいと最初は思いましたが、俺たちが繋がることでの能力の増幅を考えて、一緒にいることにしました。俺たちがいる、いわば作戦本部は日比谷公園に置きます。残る40組80人の方には、別動隊としてそれぞれオートバイで各所に待機してもらいます」
ふと窓から外に目をやって伊能は「あっ」と声を上げた。
皆が一斉にその方を見た。
「凄い……」
全員が一斉に同じ呟きをもらした。
タケトは窓際に駆け寄って声もなく見つめている。
外は明るみ始めていた。
遠く千代田区のある方向の空に、無数の黒い点が固まって、そこだけ真黒な雲がかかっているように見えた。
伊能は力強く言葉を続けた。
「特にカラスに注意するように! カラスが騒いでいたら、すぐにその場所へ行ってください。最後に隊長から一言お願いします」
須賀が少し照れくさそうに立ち上がった。
「えー、おほん」と咳ばらいをしたとたん止まらなくなった。
「えーほ! えほげほげほほほへええへへへ!」
ひとしきり咳きこんでから、急に真顔になって言った。
「本来は希君から何か言ってもらうべきなんじゃが、その時に備えて希君には力を溜めてもらっておる。わしからは一言だけ!」
須賀は80歳を超えた老人とは思えない気迫を籠めて全員を見回した。
「正義の力じゃ!」
須賀はひとり感極まった顔になった。
「討ちてしやまん! 鬼畜米英じゃ! 断じて事を行えば、鬼神もこれを避けるじゃ! 欲しがりません、勝つまでは! 一人一殺! 毒を食らわば皿までも!」
伊能が慌てて須賀を止めた。
「とにかく……まあそんなことだ! 皆、いっちょう、やったろうじゃないか!」
おお!というウォークライが響き渡った。
時刻は6時に近付いていた。
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コメント
いよいよ、発進ですね。
セイギのチカラ
異能力戦隊?サラマンダー
頑張れ。
投稿: ドスコイ | 2008年6月26日 (木) 20時00分